ホントはボリスに猫耳つけたかっただけだったりするんだよねv(ルシ談)












 「もうすぐハロウィンだね!!」
 レコーディングの合間に、スタッフや仲間と雑談している最中、唐突にルシアンがにっこりと何がうれしい
のか満面の笑顔で言い出した。
 「そうだな…だが、その日もたしか一日中スタジオに篭る予定だぞ」
 一人会話に加わらず、雑誌を捲っていたボリスが先手を打ってルシアンの提案をさり気なく却下する。売れ
る前からの付き合いの長さから、ルシアンの行動パターンはお見通しのようで、今回もせっかくだからパーテ
ィしよう!とか言い出すつもりだったのだろうという彼の予測は見事に的中した。
 冷静な青年の指摘に、けれどどうしても諦めきれないのかうーとか小さく唸っていた彼だったが、おもむろ
にスケジュールを打ち合わせていたマネージャーコンビに突進していく。
 そのままなにやら熱心に交渉している様子に、ボリスやその場にいた全員が何となく事の成り行きを見守っ
ていると、クァディールが小さく頷き、アレンがしょうがないという風な困った笑みを浮かべた。どうやらル
シアンの提案は通ったらしい。
 飛び跳ねる勢いそのままに振り返ったルシアンは、その場にいた全員に上機嫌に宣言する。

 「レコーディング終わったらパーティーするよー!!」




Happy Happy Halloween




 「はー…ホントあいつもよくやるよなぁ…」
 ビール片手にマキシミンがタコ足を口に放り込みながら、呆れたような顔で喧騒の中心にいるパーティ提案
者を眺めるのを、同じように騒ぎから避難したボリスも眺める。
 物静かなボリスが騒ぎから離れるのはいつものことだが、望む望まないに関わらず大概騒ぎの渦中にいるは
ずのマキシミンが珍しくも人垣から距離を置いているのは、ボーカルらしくパーティ直前までレコーディング
していたせいでイマイチ騒ぐ気になれなかったらしい。
 パーティといっても主に菓子類と飲み物をテーブルに並べただけのほとんど打ち上げのようなものだが、そ
れでもルシアンがどこに手を回してきたのか大量に持ち込んだ仮装用具で一応らしくみえる。
 「気晴らしにはなるだろう」
 「…まーな…」
 それぞれが動物の耳や鼻眼鏡といった仮装をして騒ぎに興じているのを横目に、半ば強制的に付けられたネ
コミミをうっとうしそうに弄りながら、マキシミンはポーカーフェイスのバンド仲間から、微妙に目を逸らし
た。
 何時もと変わらない無表情なボリスの頭に、自分と同じくかわいらしいネコミミが付けられているのは、何
度みても笑いを誘う。
 これを付けたあとにルシアンが妙に目を輝かせていたのをみると、多分ボリスは明日腰が立たないだろうな、
と短くない付き合いからだした結論に、心中こっそり同情した。
 だがマキシミン自身も翌日は同じくネコミミに触発されたシベリンによってまともに声が出せなくなってい
るだろうとこちらもボリスに密かに同情されていたりするのだが。
 互いに過剰なスキンシップのパートナーに常々いろんな意味で苦労が絶えない二人が、雑談を交わしている
と、不意にボリスが一瞬訝しげな顔を見せた。
 「どうした?」
 気付いたマキシミンの問いに、ボリスがなんともいえない表情を浮かべるのに更に首をかしげると、マキシ
ミンの背後から唐突に答えがもたらされた。
 「マキシミーンっ」
 語尾にこれでもかといわんばかりのハートマークを散らすような勢いで、シベリンがボーカルに突進した。
 「だーーーっ!離せ!!暑苦しいんだよ!!」
 背後から突如現れたベーシストにマキシミンは苛立ち紛れに容赦ない肘鉄を繰り出した。
 「相変わらずつれないなぁーマキシミンはー。そこもかわいいんだけどー」
 けっこう酔っているのか、語尾を伸ばしながらも肘鉄を難なく避けると、シベリンはマキシミンの細い腰に
腕を回して捕獲する。
 そこらの食べ物やら飲み物をひっくり返しそうなほどのマキシミンの抵抗を物ともせず、むしろ軽くあしら
いながら何事かをマキシミンの耳元で囁くシベリンに途端にアルコールとは違う赤みが顔に瞬時に上るマキシ
ミン。
 このバンドの名物というかすでに売りとなっている彼らのやりとりをちゃっかり自分の取り分だけ避難させ
たボリスが見るともなしに眺めていると、おもむろにシベリンが暴れるマキシミンを強引に横抱きにして立ち
上がった。
 「帰るのか?」
 湧き上がる女性スタッフの黄色い悲鳴。いつものことだとすでに驚きもしないほかスタッフとメンバーそし
てマネージャーズ。
 「ああ、これ以上こんな可愛いマキシミンみてて我慢なんてできそうにないからな。それじゃお疲れ様ー」
 「…明日の仕事に支障でないようにしてくれ」
 「…努力はしてみる」
 マキシミンから無言の救援要請に、一応は一言言い添えるボリスだが、果たして効果があるのかは疑わしい
ところだ。そんなにぎやかな二人の退出をきっかけにパーティもお開きとなり、簡単に片付けを終えると解散
となった。
 「ボリスーーーーっ」
 荷物をまとめたところで今度は背後からギタリストがボリスに突進。勢いに数歩たたらを踏みつつ堪えたボ
リスが振り向くと、アルコールでほんのり顔を高潮させたルシアンが上機嫌な笑顔でじゃれてきた。
 「あー!!ネコミミ取ってるーーーーーっ可愛かったのにぃ!!」
 「もう終わっただろう」
 「えーーーっ僕ネコミミなボリスの写メ取りたかったのなぁ…」
 「撮るな」
 ルシアンの言葉にすかさずストップを掛けるボリス。ルシアンは青年の腕にじゃれ付いたままむくれ顔で見
上げてきた。
 「なんでー?!すっごく可愛くて押し…じゃなくて似合ってたじゃないか〜」
 「(押し…?)そんなこといってないで帰るぞ。いつまでもここにいるわけにもいかないだろう」
 彼の言葉に引っかかるものを感じながらも、酔っ払いの言葉だと軽く受け流すと、腕にぶら下がったルシア
ンの荷物も手早くまとめた。
 「はぁい…。あ、ボリスー、今夜、おいでよーv僕の部屋のほうが近いしー」
 「…そうだな」
 「わーいvボリスとお泊りーーーvv」
 無邪気に喜んで抱きつくルシアンに満更でもなさそうなボリスが優しく頭を撫でる。その光景に再び上がる
黄色い声。
 「では、先に失礼します」
 「みんなおつかれさまーーっ」
 そのまま腕にじゃれ付くルシアンを促してボリスたちも退出。マキシミンとシベリンの仲は疑いようがない
ものの、ルシアンとボリスはいまだ判然としないのがまた乙女心を刺激するのか、4人の帰った後は、決まっ
て女性スタッフによるカップル論争が勃発していた。




 お酒が入って微妙に足元がおぼつかないルシアンを支えながら彼の部屋にたどり着くと、ボリスは慣れた様
子で台所から水の入ったコップをもってきた。
 「大丈夫か?」
 「うんー。今日はそんなに飲んでないから大丈夫。ありがとーv」
 ソファに寝転んでいるルシアンに手渡すと、ボリスは自身とルシアンの荷物を定位置に置きにいく。ほとん
ど自分の部屋とも変わらないくらい何度も泊まりにきているルシアンの部屋だ。勝手知ったるとはこのことだ
ろうというくらい、ルシアンの部屋の事は知り尽くしている。
 それほど飲んではいないはずだが、素直に水を受け取った。飲み干して一息ついたところで、今だふわふわ
と夢見心地なルシアンが、ふやけた笑顔でボリスに飛びつこうと立ち上がろうとしたとき。かさりと小さな音
を立てたものについ視線が向いた。
 ふと悪戯心がわきあがってきた。目にしたものを手の中に忍ばせたルシアンのところへ、いつも部屋におい
てある彼専用の部屋着に着替えたボリスが戻ってくる。その手にはシベリンから二人に進められた話題の映画
のDVD。
 寝るには少し早い時間だが、これを見終える頃には丁度いい頃合だろう。
 「あ、シベリンから貸してもらったやつ?」
 「ああ、ファンタジー系らしいから、お前が好きそうな内容だな」
 ほのかに笑みを浮かべて腰掛けるルシアンの頭を撫ぜる。積極的に人と関わりたがらないボリスだが、ルシ
アンに対しては他人よりはずっと歩み寄るし、自分から進んで常にない甲斐甲斐しさを発揮するのが何だかく
すぐったい。
 「あ!その前にボリス!!」
 「何だ?」
 ケースに手をかけているボリスに忘れないうちに、とルシアンが手招くと、ケースをデッキに置いたボリス
が隣りに腰掛ける。
 「トリックオアトリートー!!」
 「………」
 にっこにっこと笑顔全開なルシアンに、どう答えていいものやら思わず沈黙で返してしまった。困惑してい
るボリスの態度をどう取ったのか、すこし上目遣いで答えを促す。
 「…もってない」
 「悪戯決定だねv」
 訴えに降参だとばかりに両手を上げると、更にルシアンの笑みが深くなった。嬉々としてにじり寄るルシア
ンに困ったような顔をしながらもボリスはおとなしく相手の出方を窺った。
 ルシアンはぴったりとボリスにくっつくと、握りこんでいた手のひらを開いた。
 「飴?」
 青緑の熊のようなキャラクターが書かれた可愛らしい袋に、ボリスがポツリと漏らす。行動に予測がつかな
い彼をボリスが見守る中、青みがかった綺麗な飴玉を口に放り込んだルシアンが、不思議そうにみていたボリ
スにいきなり口付けた。
 「?!…っん…ふ…」
 いきなり舌を入れる深いキスに硬直するボリスに、構うことなく深く絡めとっていく。驚いたもののおずお
ずと舌を絡めると、口中に硬い感触がした。
 一瞬いぶかしんだものの、口に広がる甘さに先程の飴だと正体を悟る。そしてようやく意図を察したボリス
が今度はルシアンに飴を送り返すと、誘い込まれたまま強く吸い上げられた。
 互いの口中を飴が行き来するうちに小粒な飴が完全に溶けてなくなるころ、ようやく開放されたボリスが肩
で大きく息をつく。気がつけばソファの上に押し倒され、シャツのボタンも外されたあられもない格好に、け
れどボリスは抗議ではなく熱っぽい視線で見下ろす碧眼を見上げた。無言で先を促す潤んだ瞳に、もう一度キ
スを仕掛けながら白い肌に指を滑らせると甘やかな声が零れだす。
 下肢を襲う甘い痺れに思わず逃げようとして、手をソファの端に着いた。しかし、そこは緩くカーブを描く
部分だったために、体重を移動させた途端手を滑らせバランスを崩した。
 「ぁっ?!」
 「うわっ!」
 およそ色っぽい声とはかけ離れた声を上げて二人してカーペットの上に落下する。幸いな事に普通のソファ
よりも低いのと、落ちた先が柔らかなカーペットだったおかげで特に大した衝撃もなくて済んだのだが、それ
までの甘い雰囲気は見事に霧散してしまった。
 「「……………」」
 何ともいえない沈黙があたりに満ちる。
 「…その、どいてくれないか?ルシアン」
 落ちてもまだ押し倒されたままのボリスが、羞恥に顔を染めたままそれでもこの何ともいえない状況を打破
すべく、微妙に目を逸らしながらも口を開く。
 「あ、うん」
 すっかり毒気を抜かれたルシアンもつい素直に頷いて体を起こすと、ボリスも起き上がって小さく息をつい
て髪を後ろに流す。その仕草にルシアンが釘付けになっていることも知らず、ルシアンに背を向けて乱れた服
を着直そうとするが、注がれる視線に顔の赤みの引かないボリスの手が止まった。
 「………なんだ?」
 注視されることに気恥ずかしさを感じながら、ルシアンのほうへ顔を向けると、予想外に至近距離にいたこ
とに軽く目を見開いた。
 驚いて固まるボリスにさらににじり寄ったルシアンが、首筋に顔を寄せて舌で舐め上げる。思わず体を震わ
せたボリスの半端に肩に引っかかったシャツを払うと、素肌をすべる布の感触にすら感じたのか、軽く息を呑
んで眉を寄せた。
 「…こら」
 制止の声もどこか艶があるのはルシアンの気のせいではないのだろう、ボリスも形だけの制止で押し返そう
とする手にもほとんど力が入っていない。
 「いいでしょ?…ほら、ここもこんなになってる」
 それを許可と取ったルシアンは後ろから覆いかぶさるようにして、ボリス自身に指を絡めた。
 「…あっ…ん…やぁっ」
 耳に吹き込むようにしながら、上下にすりあげるとソファにしがみつくようにしてボリスが嬌声をあげる。
 「気持ち良い?」
 「ひぁっ…あ…ぁん!」
 舌で耳の輪郭をなぞり、甘噛みしながら囁くと堪えるようにソファに爪を立てる姿が更にルシアンを煽った。
 「あっ…や、も…っ」
 「ボリス…」
 「んぁっ…あっああああああっ」
 途中で理性を取り戻したとはいえ、中途半端に昂ぶった体はやすやすと快楽に溺れていく。ルシアンが手の
動きを激しくした途端、すぐに絶頂へと押し上げられた。 





今更ですが、ハロウィンネタですー。本当は当日に上げる予定だったのですが…リアルが多忙だったために結
局企画倒れになってしまいました…orz
ついでに現代版とかね。最初に思いついたんだもの…(*ノノ)
本当だとあと4本別の話も用意してたんですけどね…せっかくある程度は進めているので、残りも多少変更し
てアップしますよー!ハロウィンネタそのままではなくなりますが…














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