ちょっとした思い付きだったんだけどね…







 ここ最近、そう忙しいわけではないはずなのだが親友とすれ違う回数が明らかに増えている……気
がする。
 そうボリスが思うようになったのは、ルシアンを探してアクシピター内を歩き回っている時だった。
 通常3人一組のチームを欠けた一人を補うように別行動をすることはよくあることなのだが、それ
にしてもここまで探しているのに、見つからないのは初めてだった。
 出かけるような仕事は今日はないはずだから、確実に建物内にいるはずなのに、覗いた部屋の先々
で今しがたまでいたことを聞いたりするだけで肝心の親友の姿がいないのがもう何度あったことか。
今もルシアンが出て行ったばかりだと、女海賊の頭領から聞いたボリスは思わずため息をついた。
 「そういえば、さっきチビと一緒にいたのを見かけたんだけど…」
 言葉少なく部屋を辞するボリスの背中に、ぽつりと思い出したようなミラの言葉が投げかけられた。
 「え…?」
 思わずボリスが振り向くと、ミラはたまたまなんだろうけど、と前置きして最近よく二人でいるの
を見かけるようだと教えてくれた。
 「なんか熱心にチビと相談してるような様子だから、なにかあるかもしれないな」
 「……そうですか…」
 ミラの言葉に十分にありえることだとボリスも頷いた。馬が合うのか二人の仲の良さはボリスもわ
かっているのだが、心になんとなくひっかかるようなしこりを感じて顔に出さないものの、青年は首
をかしげた。
 今日はタイミングが悪かったのだろうと、特に気にかけないようにしたのだが、その日以降明らか
にすれ違う回数が極端に増えて、さすがに気のせいではないことにボリスも遅まきながら気がついた。
 しかもボリスと会うのを避けるように、数回タイミングをずらす様なことまであるらしい。しかも
自分とは会いたがらないくせにティチエルとは常に一緒にいるようだとミラに指摘されて一度気がつ
けば、あとはもう疑問と苛立ちで内心あまり穏やかではないボリスだったが、それでも表面上は全く
気にしていない風を装っていた。
 だが、十日も過ぎようとしているのに言葉を交わすどころか、ろくに顔もあわせなくなってくると
さすがに、ボリスにも徐々に表立って変化が現れ始める。
 あくまで表向きは普通の態度だが、本人も自覚のないだろうため息の回数や、初歩的なミスの増加
に最近二人が不自然なほど別行動ばかりだと周りもさすがに気づきはじめていた。
 ミラやアレンが気遣ってくれているが、当のルシアンの動向がつかめないボリスは心配をかけて申
し訳ないと思いながらもこれといった打開策が打ち出せなかった。
 何せ顔を合わせることも難しいのだ。話を聞くことができないし、何か心当たりがないかと考えて
みるが思い当たるものもない。八方塞りで完全に行き詰っていた。







 The smile of the crime of conscience
 






 半月も過ぎた頃、相変わらず二人の距離は縮まらず、しかも今度はやっと捕まえたと思ったらルシ
アンはしきりにティチエルの話題を持ち出すようになってきた。相変わらず無邪気に笑いながら、一
方的に話して、件の少女に会いに駆け出す。ティチエルとの仲の良さをアピールするような言動に、
わざとなのかと疑いたくなるが、煮えくり返っている内心を表に出すのもそれはそれで腹が立つと、
持ち前の鋼のポーカーフェイスでやり過ごすのが精一杯だった。そうして今日も一人書類と睨みあう
ボリスだったが、いつもよりペースが上がらない。原因はわかりきっているのにわかっていてもどう
することもできない現状に、苛立ちと焦りが日毎にまして、ついため息がこぼれた。
 「あ、ボリス、チビみなかった?」
 そうしてじりじりとしながらも結局その日もルシアンと顔を合わすこともなく仕事を終えて、宿舎
に帰ろうとしたボリスを同じく帰るらしいミラが呼び止めた。
 「…いえ、今日は見かけてないです」
 ざわりと心があわ立つが、表面上は普段と変わらない表情で振り返る。もともとルシアンと気が合
うらしい少女が、最近妙に前以上の親密さだと気づいて以来、ほんの些細なことにすら過剰反応して
しまう自分が情けないと内心ため息をこぼしながら、ミラとナルビクの大通りを宿舎に向かって歩い
ていった。
 「ボリス、今晩暇?」
 そんな青年の心情を知ってか知らずか、ミラは並んで歩く青年に尋ねる。
 「特に用事はないです」
 ボリスの返答によし、と彼女は笑顔で青年の肩を叩いて行き付けの酒場に青年を誘った。
 「あんたなら酒が入っても大丈夫そうだし、たまにはチビどもから開放されてゆっくり飲みたいん
だよ」
 店の奥に陣取り適当に頼んだ注文を待つ間、そう言って悪戯っぽく笑うミラだが、本当はこの間か
ら相変わらず進展していなさそうなボリスを心配しているのだろう。
 大人らしい配慮にボリスも久しぶりに素直に微笑んで、そうですね。とうなずいた。他愛無い話を
していると、ボリスの顔にもすこし笑みが浮かぶ。元々表情の変化が乏しい青年だが、ここ最近の沈
んだ顔しかみていないボリスの笑顔に、ミラも内心安堵した。
 同い年だというティチエル達よりずっと大人びているが、やはりこういった悩みを持つあたりは年
相応に見える。
 姉御肌な彼女にとってはボリスもルシアン達も手のかかる具合に差があっても仲間というより可愛
い弟妹のような感覚をもっているらしかった。
 「それで?あれからなにか変わった?」
 運ばれてきた料理もあらかた片付けてそこそこ酒も進んだ頃、ミラが何気ない風にボリスに尋ねる。
 「…いえ…。やっぱり避けられているみたいで、この数日は話すことも顔をあわせることもほとん
ど…」
 「そうか…」
 手元のグラスを見つめながら、ポツリと応える青年は大分アルコールが入っているからか、ほんの
り頬が染まっているが、それ以外は特に変化は見られない。
 「ま、あのルシアンがそう簡単にあんた以外に惚れるなんてないと思うけどねぇ…」
 ひと目でわかるくらいあんたにべったりだし。とミラがからかい半分で青年をみるが、青年にとっ
ては避けられていることが予想以上に堪えているらしい。
 「そう、でしょうか…」
 ぽそりと力なくつぶやいて、グラスのなかで揺れるアルコールを見つめるボリスは、珍しくはっき
りそれとわかるほど不安と困惑で瞳を揺らめかせている。
 元々端正な顔立ちの青年だが、物憂げな表情でグラスを手の中で転がしながら迷いや憂いをない交
ぜにした瞳を伏せがちにグラスを見る姿は、本人に自覚はなくとも異性、同姓問わずに目を引いた。
悩みの種である親友が明るく華やいだ美少年でこちらは真逆の静かで艶のある美青年。すばらしく目
の保養だと時折覗く酒場の踊り子達とその女店主が話していたのを思い出して、ミラは目の前の青年
には悪いが心中ひそかに同意した。
 「ま、いざとなれば部屋に張り込んでるなりして本人に直接聞いてみれば良いさ。あたしも手を貸
すし。不安になるのはわかるけど、ここでくよくよ悩んでたって埒が明かないだろう?せめて今くら
いはゆっくり酒と料理を楽しんでもいいんじゃないか?」
 ミラの言葉に、そうですね、とぎこちないながらも笑みを浮かべたボリスだったが、酒を注がれな
がらもはたして聞く勇気があるだろうかと珍しく弱気なことを考えていた。







 ミラと話したことで少しだけ持ち直したボリスだったが、帰り着いた自室の扉に手をかけたところ
で、件の二人が廊下を並んで歩いているのを視界の端に捕らえた。
 思わず硬直したボリスだったが、青年に気づいてない様子でいかにも仲睦まじく笑いあう二人を見
ているうちに、段々と胸のうちにどす黒い感情が渦巻いていった。
 そんなボリスに気づかない様子のルシアン達だったが、ふと内緒話をするような仕草で二人が顔を
近づけた瞬間、ボリスの中の何かがぶつりと音を立てて切れた。
 つかつかと足早に近づくと、足音に気づいた二人が一斉にボリスに向かって顔を上げる。
 「ティチエル、ミラさんが探していたぞ」
 二人が何か言うより早く、ボリスが告げた。
 「おねえさんが?わかりましたー」
 表向きは全く普段と変わらないボリスに、ティチエルはにっこりと笑いかけると、ルシアンに軽く
手を振って小走りに駆け出す。
 ルシアンも片手を挙げていたが、何の前触れもなくボリスに腕を引っ張られてよろめきながら小さ
く悲鳴をあげた。
 何とか転倒は免れたものの、引きずられるようにして彼の部屋に連行されながら、抗議しようと親
友の顔を見ると、ボリスはほのかに顔を赤くして目が据わっていた。そして遅ればせながらかすかに
漂う酒の香りに、珍しく彼が酒を飲んでいることにようやく気づいた頃には、ボリスの部屋に強引に
連れ込まれた後だった。
 「どうしたの?ボリス、もしかして酔ってる?」
 状況についていけず、きょとんと首をかしげるルシアンにボリスは無言で後ろ手に鍵をかけてしま
うと、無言で歩み寄ってそのまま少年を抱きしめた。
 「ボリス?…わっ?!」
 思っても見なかったボリスの反応に、驚いたルシアンがバランスを崩し、そのまま二人抱き合った
まま丁度ルシアンの背後にあったベッドに倒れこんだ。押し倒される格好で覆いかぶさるボリスにル
シアンがひたすら困惑する。
 「…どうして…」
 押し倒したルシアンの肩に額を押し当てたまま、ボリスがぽつりとつぶやいた。声がくぐもって聞
き取りづらいルシアンが聞き返そうとボリスの肩に手を置いたが、おもむろにボリスが腕を立てて少
し起き上がった。青年の動きに合わせてさらりと黒髪が流れ落ちてルシアンの視界を遮る。そうして
ルシアンの世界から余計なものを排除したボリスが、息が触れるほどに顔を寄せた。
 「どうして避けるんだ?…俺のことが…嫌いに、なったのか…?」
 先程まで聞けるかどうかも不安だったことが嘘のように、その問いはするりと零れ落ちる。
 「別に…避けてなんか…」
  初めて見る親友の泣きそうな顔に言葉を失いかけて、けれど目を逸らせずに、つっかえる様に答
えた言葉にボリスが眉を寄せたのをみて言葉が続かない。
 「…そうか…」
 「え…?…な、ちょっ…ボリス?!」
 低くつぶやいた刹那、やおら上半身を起こしたボリスが乱暴な手つきでルシアンの服に手をかけて
きて、ルシアンが狼狽しきった声を上げた。けれどそんな少年に構うことなく外套を剥ぎ取ると床に
放り捨て、抵抗を封じるように彼の両手を頭の上で一纏めにしてしまうと、中に着ていた上着で固定
してしまった。
 そうしてルシアンの自由を奪うと、今度は馬乗りになったままボリスは自分の服も手荒く脱ぎ捨て
た。あまりにもありえない状況に唖然として見上げるばかりだったルシアンに、ためらいなど一切見
せずに覆いかぶさり数回ルシアンの首筋をたどる様に口付けて、徐々に唇と指を下へと滑らせていっ
た。
 「ん…ボリス…?」
 所々に所有の証を刻まれながら煽るようなボリスの行為に、ルシアンは早々に息が上がっていく。
 ボリスから積極的に求めてくることなど今までになく、初めての状況に少年も戸惑いを隠せなかっ
たものの、嫌なわけはなく抵抗はしなかった。
 「ルシアン…」
 さすがに両手を戒めたのには驚いたようだが、それ以降の行為に為すがままのルシアンに、嫌がら
れてはいないと、ボリスは少しだけ安堵した。そうして普段彼から与えられる快感を自分も引き出そ
うと少しずつボリスも大胆になっていく。
 欲に潤んだ瞳で息が乱れていくルシアンを眺めながら、立ち上がり始めたルシアン自身に指を絡め
ると、びくりとルシアンの体が跳ね上がった。
 「ぅわっ…ちょ…っ」
 慌てるルシアンの声など聞こえないかのように、絡めた指の動きを早めてルシアン自身を育ててい
く。これまではルシアンからの刺激と熱を受け止めるだけで精一杯だったボリス自身がこうして主導
権を握ることなどなく、初めてのことに少しだけ恥ずかしくもあったが、何より自分の行為でルシア
ンが反応するのにボリスの欲にも火がついていった。
 ルシアンにつられるようにボリスも息が上がっていく。ぬるりと指に絡む先走りの蜜にちらりと目
をやると、肌に触れていた唇を離して上体を起こした。
 まさかそこまでボリスが積極的になるとは思わなかったらしく、堪えるまもなくまたたくまに追い
詰められていったルシアンが限界を感じ始めた頃、唐突に指が離れていって無意識に閉じていた瞼を
押し上げた。
 さすがに酔っているとはいってもボリスは数度躊躇う様に視線をさ迷わせたものの、熱に解け始め
た思考は高みに向かうことに意識が向いている。早く早くと急かす本能に抗いきれずに、自分で解す
ことももどかしく感じてルシアン自身に手を添えて、ゆっくりと腰を落としていった。
 「え…?!」
 「ん…ぅ…く…っ」
 信じられない光景にルシアンが再度声を失った。慣らすこともなくボリスが強引にルシアンを受け
入れたのだ。目を見開いたものの、止めることはせずにボリスの動きを見つめた。
 解れていない中は窮屈で、ルシアンもきつそうに眉を寄せたが、それでも徐々に飲み込まれていく
様子があまりにも淫らで目が離せない。
 「ぁ…ぅ…ん、ふ…っ」
 浅く息を吐きながらゆっくりと腰を落としていくボリスの瞳にうっすらと涙が滲んだ。さすがにい
きなり受け入れるのは慣れてきた行為とはいえかなり辛く、何度も途中で動きが止まりかけるが、一
度止めてしまえば先に進めないのと、何よりアルコールで箍が外れた今のボリスは自分で勢いを止め
ることはできない。ただ、ルシアンの蜜が多少潤滑剤のかわりになったおかげで、大分時間をかけな
がらルシアンをすべて飲み込んでいった。
 「んぅ…は…っ」
 苦しそうに眉を寄せながらも結局全てを収めたボリスが、詰めていた息をそっと零す。中でルシア
ンが動く度にぴくぴくと肩を小刻みに跳ねさせながら、痛みに耐えるように瞳を伏せた姿がどうしよ
うもなくルシアンの欲を刺激した。
 半ば以上酒の勢いに押されて慣らしもせずに受け入れたものの、すさまじい痛みの波に苛まれてさ
すがにボリスもそれ以上先に進むことができなくなった。
 同時に頭の中に今までの激情を覚ますほどの冷たい思考が過ぎる。
 こんなことをして何になるというのか。この優しい親友はこんな浅ましい自分に同情していただけ
ではないのか。ただ体を繋げただけで、離れてしまった心を取り戻すことなんてできないのに。
 「…ボリ、ス…?」
 「ルシアン…」
 ルシアンが上がり始めた息の下から動きの止まった青年を見上げる。ようやく自分に向けられた青
い瞳に、どうしようもない嬉しさと苦しさが込み上げてきて、想いが頬を伝い落ちた。
 予想外のボリスの涙にルシアンもひどく慌てたが、あまりにも綺麗な涙に目が吸い寄せられる。
 「ね、ボリス…これ、外して?…このままじゃ、僕ボリスに触れられないよ…」
 優しく話しかけると迷うようにボリスの瞳が揺れて、けれど結局素直にそっと手の戒めを解いた。
自由を取り戻した両の手でボリスの涙に濡れた頬を撫で、引き寄せて啄む様なキスをする。ボリスは
驚いたように体を強張らせたものの、徐々に深くなる口付けに自らも舌を差し出して応えた。
 「ん…ふ…んんっ」
 ボリスがキスに意識を向けている隙にルシアンが緩く腰を突き上げると、びくりとボリスの体が跳
ねた。
 「ぁっ…ルシ…っ」
 痛みしか感じなかったそこから、信じられないくらいの快感がボリスの体を突き抜けて、彼は正直
すぎる自分の体に羞恥のあまり全身を赤く染めた。
 「…ボリス、ちょっとそれはずるい…っ」
 「ひぁっ?!…やっ…あ…あああっ」
 ついさっきまでの強硬な態度と打って変わったあまりにも可愛らしい反応に、ルシアンが堪えきれ
ずにボリスの腰を掴んで激しく突き上げた。
 ルシアンの急変した態度にボリスも驚きつつ、行為の激しさに束の間取り戻した理性が剥ぎ取られ
ていった。
 腰を掴まれて激しく揺さぶられるのに立てた腕が耐えられなくなって、ルシアンの顔を抱きこむよ
うに肘を突いた。力なくシーツを掴みながら、逸らした喉から絶え間なく喘ぎ声が溢れて止まらない。
 丁度耳元で嬌声を聞ける体勢に、ルシアンの口元に笑みが浮かんだ。
 「ぁ……る…しあ、ん…?」
 熱に追い上げられて、徐々にボリスの声が切羽詰ったものへと変わっていった途端、突然動きの止
まったルシアンに、閉じていた瞳を開いてボリスが問うような視線を向けた。
 「ボリスも動いて?」
 青年の無言の問いににっこりとルシアンが笑いかける。ルシアンの意図を悟って羞恥と困惑の表情
を浮かべたボリスだったが、ルシアンは全く動く様子がない。
 もう少しで高みに手が届きそうな今、中途半端に止められた熱が体の奥でうねりボリスは熱と羞恥
に苛まれながら迷うように目を逸らした。
 「ほら…ボリスの好きなように動いていいよ…」
 「ぁっ…はぅ…ん」
 ルシアンが促すように僅かに腰を進めると、ボリスはそれだけで大きく喉をそらせ、けれどそれ以
上は動く気配のない様子に苛立ちにも似たもどかしさが募っていく。
 「ルシアン…っ」
 「ねぇ…ずっとこのままでもいいの…?」
 ルシアンが耳元に囁きかける。それすら甘い疼きとなってボリスはしばらく躊躇った後、観念した
ように青年は小さく息をついてゆっくりと起き上がった。
 「ん…ふぁっ…あっ…ぁぁっ」
 動くたびに中で擦れて快感が生まれその都度反応をするが、燻る火に気持ち油を注ぐようなだけで
決定的な刺激に成りえない半端さに背中を押されるように、震える腕を精一杯立てて探るように慎重
に腰を落とした。
 自らの動きを余すことなくルシアンの視線に晒されて恥ずかしさに目を閉じるが、閉じたことで余
計に感覚が鋭くなったようで、全身で感じる快感がボリスの深いところまで侵食していく。
 一度動き出せばあとは勢いを止めることはできず、ボリスは声を抑えることも忘れたように内側の
欲を孕んだ喘ぎをあげて没頭する。ルシアンの目線を全身で受け止めるだけだったが、ふと目を開け
たボリスが熱と快感にとろりと溶けた瞳に、見上げてくるルシアンを映してふうわりと笑みに細めた。
 「ああっ!…るしあんっ…?!」
 それまでボリスの乱れる姿を眺めるだけだったルシアンが、その艶やかな姿にたまらなくなって、
やおらボリスの腰に手を添えて突き上げてきた。いきなりの刺激に驚いたボリスだったが、増した刺
激にたまらず嬌声をあげる。
 「ボリス…大好きだよ」
 「あっあっ…ルシアンっ…ひぁああああっ」
 ルシアンが熱を含んだ声と瞳でボリス見つめた途端、答えの代わりに一際高い声を上げて締め付け
て二人同時に高みにたどり着いた。







 熱の痕跡を残しながら静けさを取り戻した部屋の中で、シーツに散らばる黒髪を飽くことなく指に
絡めながら、金の髪の少年は隣で眠る青年を見つめる。
 思えば半月も触れることができなかった二人は、久しぶりの行為に溜め込んでいた欲をすべて吐き
出すように濃密な時間を過ごしたのだ。特に今までにない積極的なボリスは慣れないことやようやく
触れることができた安堵感に、最後のあたりはほとんど意識が飛んでいたようで、気絶するように意
識を失ったままかなり深い眠りに落ちていた。
 「ボリスのこんな可愛いところみられるなんて、我慢した甲斐があったよね…」
 嬉しそうにルシアンがほくそ笑む。
 きっかけはほんのちょっとボリスの焼もちを焼くところを見たくて始めたことだったのだが、なか
なかそんな素振りを見せてくれない親友に、気がつけば半月も時間がかかってしまった。
 「明日お礼言わなくちゃ」
 特に金髪の少女はとても楽しみにしていそうだと、思いながら寝心地の良いところを探してボリス
に寄り添うと、閉じた瞼にそっと口付けひっそりと笑みを浮かべた。









 ※言い訳※
 メインがお世話になっているクラブで、クラメンさんと盛り上がったお話が元ネタだったりwなる
べくあの時出ていたネタを盛り込んでみたのですが…上手くクリアできたかしら…w
 ちなみにタイトルは確信犯の笑みですw














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