酔ったのを口実に、たまにはこういうのもいいのかもしれない







非常階段




 「はい、今日もライブお疲れ様でしたー。明日は移動日ですから、今日はゆっくり飲んでくださいね。もち
ろん集合時間に遅れない程度にですが」
 にこやかにしかしやんわりと釘を刺しつつも、アレンはそういって手にしたコップを高く持ち上げる。一拍
おいて全員のコップが高々と掲げられ、にぎやかに宴会は幕をあけた。



 「あれー?ボリス?どうしたのー?」
 程よくアルコールが入ったルシアンがうっすらと頬を赤らめながら、隣りに座るボリスの顔を覗き込むと、
彼にしては珍しく少し間を空けてから反応を返した。
 「……。なんだ…?」
 「顔真っ赤だねーかなり酔ってる?」
 わーめずらしー。といいながら顔をさらに寄せるルシアンにそうか?とボリスは返そうとして、途端にくら
りと軽く視界が回った。
 「大丈夫?」
 軽く傾いたボリスの体を慌てて支えながらルシアンが覗き込んでくるのをアルコールで潤んだ瞳でぼんやり
と見つめながら、何時もと逆だな、とどこかかすんでいく思考の片隅で思ったあと、そのままボリスの記憶は
途切れてしまった。
 「ボリスさん大丈夫ですか?」
 くったりとルシアンによりかかる少年に気付いたアレンが傍によって声をかけると、ルシアンがこのまま
ホテルに帰ると告げて立ち上がる。
 「ボリス疲れてるみたいだから、僕もこのまま一緒に戻るよ」
 「…すまない」
 辛うじてまだ動けるらしいボリスはルシアンに支えられつつ立ち上がると、一言告げた。傍目には何時もよ
り酔っている程度にしかみえないが、すでにボリスは記憶が飛ぶほどの泥酔状態だったりする。おまけにふら
ついてはいても行動も普段と変わらないせいか、ルシアンも他のメンバーもボリスがいつもではありえないく
らい酔っているのに気付いていない。
 「いえ。送りますよ」
 はじめからそのつもりなのか、お酒を口にしていないアレンが車のキーを取りにいこうとするのをルシアン
が待ったをかけた。
 「タクシー拾うから。大丈夫ー」
 ね?とルシアンがボリスを見やれば、彼も軽く頷いた。
 「マキシミン達はまだ飲むだろうから…。気にしないでください」
 「そうですか。…気をつけてくださいね」
 ふらつきながらもしっかりした口調のボリスをみて、大丈夫だろうと判断したアレンは一応店先まで見送る
と二人がタクシーに乗り込んだのを見届けて店内に戻った。
 「二人は?」
 席についたアレンにクァディールがお茶の入ったコップを手渡す。
 「あ、ありがとうございます。ちゃんとタクシーに乗りましたよ。ボリスさんも一緒ですから大丈夫だと思
いますし」
 「そうか」
 アレンの言葉にうなずいて、クァディールたちも改めて宴会の輪に入っていった。




 ホテルについたルシアンたちは、しかし部屋ではなくなぜか非常階段に身を潜めていた。
 「…まさかここまできているとはな…」
 階段に腰掛けたボリスがさすがにうんざりしたような声で呟いた。
 「どうしよう…あの調子だとまだずっと粘りそうだよね…」
 ドアからそっと様子を窺っていたルシアンが困ったような顔をして降りてくるのを見上げる。
 部屋のある階でエレベーターを降りたまでは良かったが、なんとどこから聞きつけたのか追っかけらしい数
人の女性ファンが部屋の前で待ち構えていた。
 たまたま彼女達から見えない位置にエレベーターがあったおかげで、危うく災難を逃れたものの思わず非常
階段に逃げてしまった二人は、念のために一階下まで降りて身を潜めることにした。
 エレベーターでロビーまで降りてしまえたらよかったのだろうが、タイミングが悪く、彼女達の仲間がエレ
ベーターホールまで勢力を伸ばしてしまったものだからどうしようもない。
 「…仕方ないな。アレンさん達に頼んで別のホテルを手配してもらうしか…っ」
 ケータイを片手に立ち上がったボリスが、しかし大きくよろめくのをみて、ルシアンが駆け下りてきた。
 「ボリス!!」
 踊り場に立つボリスから一段上がった状態で無事抱きとめたルシアンだが、ほっとするまもなく上からは見
えない壁際に移動する。
 気配に気付いたボリスも息を潜めて上の階の様子をうかがった。
 「ねぇー今こっちから音しなかったぁ?」
 「はぁ?そっち非常階段だよ?するわけないじゃん」
 「だよねー」
 間延びした女の子数人の声が開いたドアからもれてくる。しかし階下までわざわざ見に来ることもなく、そ
のままドアの閉まる音と共に声も遠ざかっていった。
 壁際で抱き合ったまましばらく様子を窺うも、戻ってくる気配がないことにようやく詰めていた息を吐き出
した。
 「すまない、ルシアン…」
 一段差に見上げる形になったボリスが見上げると、ルシアンはにっこりと笑顔を見せた。
 「えへへvなんだかいつもと逆で新鮮だね」
 やはりルシアンも酔っているからか、抱きしめる腕に力を籠めとボリスの髪に顔を埋めた。
 いつもは人目を気にして逃げようとするボリスだが、アルコールで力が入らないのか、抵抗する素振りすら
見せない。 
 「ルシアン…連絡するから、少し腕を緩めてくれ」
 しばらく抱き合った後、そういって持ったままだった携帯からアレンにホテルの状況を伝えると、すぐさま
別のホテルを手配するとの返事が返ってきた。
 「ただ、いまからですと一時間くらい手配に手間取ってしまうんですが…」
 「わかった。適当に時間を潰しておく」
 手配が出来次第迎えにくるとの言葉で通話が終了し、移動しようとルシアンに伝えようと顔を上げると予想
外の至近距離にルシアンが顔を寄せていたのに驚いた。
 「一時間かぁ…この時間だとファミレスかなぁ?」
 どうやら会話を聞こうと顔を寄せていたらしく、説明する前に行き先を思案するように視線を中空へと彷徨
わせた。
 「………。」
 ふとそんなルシアンを眺めているうちに、ボリスは唐突になんだか無性にキスがしたくなったきた。見た目
こそ何時もと変わらないとはいっても、泥酔状態で記憶も判断力もあやふやな今の彼は、普段頑なに理性に押
しかためていた本能がここぞとばかりに歯止めが効かなくなってしまっていることにすら気付かない。
 自覚のないままルシアンの顔を見上げていると、見つめられていることにきづいたのか、少し首をかしげる
ようにして振り向いた。
 まさに、キスをするには丁度良い角度だと思いながら、無意識に腕を首筋にのばして顔をよせた。
 「ボリス?」
 呼びかけに答える代わりに、そっと唇を重ねてすぐに離す。普段滅多に自分からしてこないボリスからのキ
スに当然目を丸くするものの、悪い気はしないのでルシアンは嬉しそうに目を細めて、お返しをする。
 「…ん…」
 次第に深くなっていくキスにボリスはあっさりと陥落し、踊り場に座り込んでさらにその先を促すようにル
シアンの唇を舌でなぞった。
 いつになく積極的なボリスにルシアンは戸惑うどころか嬉々として、耳を甘噛みしたり服の裾から手を忍ば
せたりと行為に没頭していく。
 一時間と少し後、ようやく手配が整ったアレン達が迎えに来たときには、最初別れたときよりも妙にぐった
りしたボリスとやけにすっきりしているルシアンがいたらしい。







 ※補足と言い訳※
 バンドネタでルシボリを…。さすがにこれ以上は長すぎるので一部カットさせて頂きました…orz
 ちなみにルシアンがいつもよりしっかりしてるのは、ボリスにキツイ酒を飲ませつつ自分は何時もの半分以
下しか飲んでいないのです。つまり確信犯。
 うちのルシこんなんばっかり…orz
 長々と失礼しました〜。 




 某サイト文字板に投稿したものをまたもアップ。このネタは投稿させていただいたサイト様の絵茶(ほとん
ど日参)でその日の話題の中心にあったTW男性陣でバンドものvです。あまりに萌えたので勢いのまま書き殴
り、そしてシリーズ化決定。(ぁ
 …元々別ネタで考えていたパラレル現代モノの話が煮詰まっていたときに、このバンドネタに出会えたおか
げで別ネタも上手く話が見えてきたとかいうのは内緒の方向で…。
 ちなみにあんまりにも長くなっちゃったんで割愛した部分はおまけにしてみました。ぶっちゃけエロいシー
ン中心だったりするんですがwあ、でもこれくらいはまだ軽めですかね?(爆)














おまけ(エロ有ですのでご注意ください!)

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